2010年6月21日月曜日

ドイツへワインとワイナリーの研修を終えて【前編】

2009年の リースリング バイザグラスキャンペーンでは、優秀賞を獲得した2店に、ドイツ研修ツアーが贈られました。

WWワールドワインバー&ビストロ (東京都千代田区)

一宝 天寅 (大阪府大阪市)

2010年4月23日(金)~28日(水)に実施されたツアーに参加された『天寅』の関さんから、ツアーのレポートと写真が届きましたので紹介します。

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ドイツへワインとワイナリーの研修を終えて

                           by  『一宝 天寅』  関 順
【前編】

アイスランドの火山の大噴火があった影響か飛行機は予想通り満席で、ヨーロッパは遠いとは聞いていたもののフランクフルト空港に到着したときはすでに随分と疲れていた。

とはいえ、初めてのドイツで、しかも初めてのワイナリー研修で(個人的なワイナリーへの訪問はあるけれども・・・)、緊張感を伴うワクワクした気持ちでホテルへのバスへ乗り込んだ。



ホテルでのミーティングの場所には多くのヨーロッパの若いソムリエたちが自信に満ちた笑顔で談笑していた。 50人ほどはいただろうか。
アジア人は我々日本人二人をいれても3人だけで、もう一人の彼はカナダで育った台湾人でロンドンで活躍中とのことであった。
とにかく、少し気後れしそうな自分を叱咤せずには笑顔を保つのは難しかった。


歴史的な醸造所というクロスターエーベルバッハは宿舎となったウィズバーデンのホテルから車で約30分ほどだった。

空港からホテルへ向かう車中でも感じたことではあったが、ドイツという国はいかに自然が多く残る美しい国であることにまず驚いた。



醸造所から畑を通してライン河を望むと、そこには大きな近代的建物は見当たらず美しい夕日が時間の流れをゆっくりとしたものにしていた。
少しオーバーな表現になるが数百年前からのそこでの人々の営みが感じられるようでさえあった。 

しかし、醸造所内は一転して近代的な醸造設備がならび、コンクリートの打ちっぱなしの建物は近代ドイツ的な無駄のない機能美を感じた。地下に配置された圧搾場とステンレスの大型タンクは集荷されたぶどうが重力に逆らわずに運び込まれる為のもの、ぶどうにストレスがかからないということであった。なんとも贅沢な造りに見えた。

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翌日は朝からガイゼンハイム醸造大学でのドイツワインの今後のマーケティングのレクチャーで、ヘンドリック・トーマ氏(ハンブルグのマスターソムリエ)による数時間にわたるティスティング・セミナーが行われた。 

マーケティング戦略の講義は過去におけるドイツワインの「輸出戦略の失敗」(甘口カジュアルワインへの偏り)と「ワインや産地の名前の難しさ」に対しての解についてのものであった。 

内容的には特に新しさを感じなかったが、ドイツ人のコミュニケーションのうまさとプレゼンテーションのうまさは意外なほどで楽しい講義であった。
(もっと生真面目な内容のものを覚悟していたのだが、さすがEU、コミュニケーションに長けていた)

トーマ氏の進行は痛快で見事だったと思う。
まず最初の8種類は「産地ごと」というタイトルではあったものの、ピノグリ、シャルドネを含めた非常にレベルの高い白ワインを紹介するものであった。クリーンでスタイリッシュなワインも見られ、和食や日本人の好みに合いそうなバランスのいいワインが多く紹介された。 



第2部は「リースリングの熟成のポテンシャル」についてで、一番古いものは1946年のシュペートレーゼ・トロッケンがテイスティングに提供された。

第3部は「赤ワイン」をテーマのものであったが、ここでもドイツの赤ワインのレベルの高さを再確認 することが出来た。あくまでヨーロッパ的で、個人的には少しクラシックなタイプのボーヌのワインを 連想させるようなものが多く、好印象であった。
ここでもやはり日本人の嗜好に合うであろうと感じた (特に和食とのマッチングについて)

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翌25日はVDPの見本市に参加した。 

ライン河のほとりに建つ近代的な建物はウィズバーデンの街並とは少し違ったもので、「近代的な国・ドイツ」を感じるものだった。
早速にも目当てのラッツェンベルガーのブースを訪ね、リースリングのカビネットからその日のテイスティングを開始した。

リースリング主体にティスティングをし続けたこともあり、ひとつずつの蔵の個性を自力で見極めるのは困難であった。しかし、いずれの蔵も商品のレベルは高く、モーゼルの生産者たちは繊細なバランスの上質なリースリングを出品していたし、ラインガウはモダンな辛口リースリングを多く出品しており、非常にいい経験をすることが出来た。

その後、ラインガウやアールの生産者のブースを訪ねると、ボディに厚みのある長期熟成型のシュペートブルグンダーからミディアムボディーながらとてもエレガントなものまで試飲できた。

赤ワインの生産者たちをフレンドリーで親切であったという記憶する一方で、彼らは自信味満ち溢れ、また消費者に迎合する雰囲気は少なく、「おれたちは信念に基づいてワインを造っているだけだ」とでも言っているかのような印象であったように感じた。
前々日に訪れたクロスターエーベルバッハの醸造所の人たちとは少し違う。「人間臭さ」を感じたといえば 言い過ぎだろうか。



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翌26日は待望のゲオルグ・ブロイヤー訪問だった。 

バスを途中で降り、古い町並みを抜けて、小さなおもちゃのようなゴンドラに乗ってリューデスハイムの丘の上まで行くことになった。
幸いにも好天に恵まれ、ゴンドラから見るぶどう畑と古い町並みの風景は素晴らしいものだった。

ゴンドラの終点から10分ほど歩いてブロイヤーの畑まで行くのだが、道の途中でデンマークのソムリエが道端の木の葉っぱをちぎって食べだした。背は190センチくらい、スキンヘッドの男性である。
彼は私にもその葉っぱをさしだし、食べてみろとすすめた。木の名前は記憶出来なかったが、彼曰く、その葉は春のその短い期間のものだけはサラダに使えるのだという。

その後もぶどう畑の中のハーブを取っては私にすすめてくれた。 
恥ずかしながら大阪生まれ大阪育ちの私は雑草とハーブの違いが見極められず、食に携わる者として気恥ずかしい感じがした。




ブロイヤーの畑はほぼビオロジックで行われているという事だった。

根拠もなく「ブロイヤーは大きなワイナリー」と思いこんでいた私は、手入れの行き届いたぶどう畑やとても近代的とはよべない醸造所をみて、すこし驚いた。
地下セラーもあまり大ぶりなものではなかったが、あの洗練された味わいの辛口リースリングが醸されるのかと思うと驚きはさらに大きなものとなった。

ティスティングを通してトレサ・ブロイヤーさんの話を聞くこと出来たが、地域に密着しながらも常に革新的に、かつ将来にむけて全て新しいの可能性に挑戦する、ワイナリーとして、醸造家としての姿勢に尊敬の念を覚えた。
今後は考え方を変えてブロイヤーを楽しもうと思った。



【後編】に続く


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